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病気体験談集

体験談

* 匿名希望 *

私が非定型精神病(参考1参考2)を発病したのは約4年前のことです。
一人暮らしをしていましたが、仕事を辞めて睡眠不足が続き、しばらくして引篭もるようになりました。やがて片付けものが出来なくなり、家の中は荒廃する一方になりました。そんな或る日突然妄想&幻覚にかられ、やがて幻聴も聞えて来るようになりました。この頃になるとさすがに友人も変だと思ったようで、友人の勧めで病院に通い出しました。
通院し始めてまもなく幻聴などは取れ、正社員で就職しました。数社受けて全部合格だったので、おそらく傍目には病気だとは思えない程度には回復していたのだと思います。
ところが入社2~3ヶ月した頃、どんどん仕事が出来なくなり始め、とうとう一桁の割り算を行うにも指を使わないと出来なくなってしまいました。ほかにも薬の副作用で、そわそわイライラとして体が揺れる「アカシジア」という状態が進行し、辞職しないとしょうがない状況になりました。

この状況をどこへ相談していいか判らずインターネットで検索すると、保健所に相談すればいいことが判りました。そして保健所の紹介で地域生活支援センター咲笑に通いはじめました。
最初の内は自分の足で歩いて通所していましたが、意欲が低下する「陰性症状」がだんだん悪化してゆき、片付け物が出来なくなり、家事全般が出来なくなり、ついには一人で家を出ることすら出来なくなってしまいました。一人では通院もできない状態でした。
一人暮らしでこの状態は致命的でしたが、しばらく引篭もっていると咲笑が様子を見に来てくださり、毎日の通所送迎や通院同行をしてもらうことになりました。
自力で食事を作ることも適いませんでしたが、幸い咲笑には、水・土に食事サービスがある他、一人暮らしの人のための夕食会というのがあり、これらのおかげで夕食に困ることがありませんでした。食事サービス&夕食会の基本は職員さんと通所者が一体になって食事を作るものなのですが、作ってもらったものを食べるだけでやっとの状態でした。お昼には宅配のお弁当を頼みました。 部屋が片付けられない件は、ヘルパーサービスを受けることになりました。最初は咲笑の通所者で構成されている同じ病気の仲間であるピア(=仲間)ヘルパーを受け入れる余裕はなく、健常者のサービスを受けていましたが、ヘルパーさんに来ていただく内に施設長さんの勧めでピアヘルパーを利用するようになりました。利用してみると、同じ病気の仲間だけに病気のしんどさを良くわかってもらえたりとピアの良い点を知りました。
この間にもイライラで非常に苦しいアカシジアがどんどん悪化し、体が揺れたり付随意運動をするのみならず、部屋を歩きまわったり走りまわったりするようになりました。
主治医もなんとかしようとしてくださり日本で発売されている非定型抗精神病薬のほとんどを試しましたが、どの薬も幻聴などの陽性症状には効いても、いまいち薬の副作用であるアカシジアを解消できず、抗不安薬で一日18時間ほど眠ってすごす日が続きました。
そんな状態でしたので咲笑の職員さんや仲間に支えられてなんとか生活&生きて行くことができていましたが、一方心の底では、将来に希望のない暗い毎日だったのも事実です。
やがて、主治医とのやりとりで、あまりにアカシジアが酷く薬が合わないので入院して薬を合わせようという話になりました。

そんな折、「咲笑」から連れて行っていただいた講演会で新薬アリピプラゾールの話を耳にしました。
何でも、現代精神医学では、神経伝達物質のひとつであるドーパミンの供給過分が統合失調症&非定型精神病の原因のひとつなのではないかとされている「ドーパミン仮説」というのがあるそうですが、現在日本で発売されている統合失調症&非定型精神病の薬はこの「ドーパミン仮説」に基づきつくられているそうです。
そしてその新薬も「ドーパミン仮説」にのっとり作られているそうなのですが、何でもその新しい薬は従来の薬とは異なりドーパミン受容体に蓋をしてドーパミンを遮断してしまう訳ではなく、ドーパミンの分泌をコントロールする薬とのこと、これはひょっとすると薬によるドーパミン不足が原因で、そわそわ&イライラ感とじっとしていられない状態が起こるアカシジア(非常に苦しいです)にも効くのではないかと、ちょっと楽しみになりました。
さっそく、発売されれば薬を変えてくださるよう主治医にお願いしました。主治医にはあまり期待し過ぎぎないようにといさめられましたが、快諾してくださいました。
入院して薬を合わせる話は、その薬が合わなかったときに行うことになりました。

ところがその薬はなかなか厚生労働省の認可が下りずに約1年半の長期に渡ってそのままの状態で時が過ぎました。そのあいだ支援センター咲笑とヘルパーステーション・アパランが生活を支えてくださいました。このサポートがなければとてもやっていけなかったと思います。そして今年の6月初めにようやく許可が下り、噂の新薬アリピプラゾールは製品名エビリファイという名で姿をあらわしました。
思いもかけなかったことに、飲みだしてすぐ、気がついたら計算能力が戻って来ていて、まもなく次には一人で出歩けるようになりました。読書も出来ずTVも見れなかったのが嘘のようです。
もっとも、いいことばかりではありませんでした。残念ながら期待していたアカシジアは直りませんでしたし、軽くではありますが、幻聴や関係妄想などの陽性症状が復活し、私の場合は新薬単剤処方で治療してゆくには無理があることが判り、主治医と二人三脚でよく話し合いながら従来の薬とカクテルで調合調整しながら合わせていく日々が今も続いています。
ほかにも、まだまだしんどくて家事や片付けがきちんとできなかったり、自力で都心まで出ても、そこで疲れてしまってその先の買い物をする迄にいたらなかったりとするので、今後どう体力をつけていくかも大きな課題です。

希望もなく自暴自棄になっていた時期もありましたが、自分に合う薬と出会え、生きていてよかったと思います。
現在の医療は本当に日進月歩の世界です。どんな時でも希望を捨ててはいけないという大事なことを学びました。
そして、良い主治医に恵まれたことを心から感謝すると共に、どんな時にも影に日向に支えてもらった支援センターの職員さんたちや仲間をはじめ、福祉制度の存在に心から感謝をいたします。

まだまだアカシジアでイライラと歩きまわったり、軽い陽性症状や陰性症状が出たりしていますが、現在アメリカでグルタミン酸仮説に元づく新薬も開発されつつあるという噂ですので、これからの医療の進歩と福祉の発展に益々期待しております。

 

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