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病気体験談集

事務職員として

ヘルパーステーション・アパラン

事務職員 T.I

「1. 仕事がしたい」
2002年、たしか大阪府が主催して行われた「障害者(児)ホームヘルパー2級講座」というのがありました。僕が発病してちょうど12年目の年のことです。ずっとまえから「仕事がしたい」という夢がありました。
この頃は、以前と比べたら僕の病気の状態は本当に良くなっていました。
大阪府の池田市に「支援センター・咲笑」が開所して、「ピアヘルパー(精神障害者が精神障害者のホームヘルプをする)」という事業をしている、という情報も知っていたので、「ホームヘルパー2級」の資格さえ持っていれば、僕にだってできるのではないか?という思いで一杯でした。というわけで、2002年に開催された「障害者(児)ホームヘルパー2級講座」を受けるために応募してみることにしました。僕の応募のときに使った葉書には「病気」のことを伏せて応募しました。すると、あっさり「通って」しまって、ぼくは「ホームヘルパー2級」の講座に受講することになりました。

「2. 甘く見ていた パートⅠ」
「ホームヘルパー2級という講座は、資格を取るときにテストがない。」と知っていたので、ぼくは、「そんなん、じっと机に座って話を聞いているだけで取れる資格だ。楽勝だ」なんて思っていました。ところが、実際受けてみてわかったのですが、これがすごくしんどかったです。週に1、2回程度のペースで半年かけて資格を取る、ということだったのですが、一緒に受講した周りの人たちはみんな僕みたいな病気を持った人ではなかったし、土曜、日曜と連続して講義があったときとか、交通時間が片道2時間ほどかかる会場で、朝の9時から夜の6時まで講義があるときとか、ホンとに大変でした。講義の最中に僕の「病気の状態」が悪くなったときとかは、ホンとに「発狂して机を蹴飛ばしてやろうか」と思いながら、ガツガツ薬を飲んでナンとか耐え忍んでいました。各講義のあとに「感想文」を書いて提出しなければならなかったので、これもしんどかったです。僕は教科書を見ながら本当にテキトウな感想文を書いて何とか凌いでいきました。
それでもって、ぼくは「ホームヘルパー2級」の資格を取ることだ出来ました。

「3. 甘く見ていた パート2」
ヘルパー2級の資格を取って、さっそく「支援センター・咲笑」に「ピア・ヘルパー」の登録に行きました。ふつうの「ホームヘルパー2級」の資格だったら、ピアヘルパーになるために上乗せ研修がいるのですが、僕が取った資格は「障害者(児)ホームヘルパー2級」だったので、上乗せ研修なしでピアヘルパーになることが出来ました。
ところが、ぼくは、この「ピアヘルパー」という仕事もとっても甘く見ていました。「部屋やお風呂とか、トイレとか、掃除してくる仕事」と、軽々しく思っていたのですが、「ロクに会ってもいない利用者さんのところにいき、その方の部屋の掃除などをする」というのは、ほんとに「大変」なことです。「ピアヘルパーだから、少しくらい仕事が楽」なんてこともまったくない。ピアじゃなくて一般でやっている「ヘルパーさん」たちと仕事内容は全く変りがありません。「僕はだめだ。講義のときにも講師の先生が言っていたけれど、知らない人の家にあがって、掃除をするのがこんなにも大変だなんて思っていなかった。もう、仕事は出来ない」ということで、三ヶ月の間に、だいたい8,9日くらいヘルパーの仕事をしただけで僕はもうヘルパーの仕事をやめようと思いました。

「4. 首の皮一枚で…・」
僕はもう、ヘルパーの仕事をやめることで頭の中が一杯でした。月に一度に、ヘルパーがみんな集まって「ヘルパーミーティング」というのをするのですが、今度の「ヘルパーミーティング」で、「もう、僕は仕事が出来ない」ということを宣言して、仕事を辞めるつもりでいました。そして実際、ミーティングでそういう風に僕が発言して、「あーほんとに短い間しか仕事ができなかったなぁ」とおもっていたら、咲笑の施設長さん(今日、僕と一緒にこのシンポジウムに参加している野田さん)が、「乾、君はパソコン使えるか?」と言うのです。僕は、調子に乗って「ちょっと位なら出来ますよ。ブラインド・タッチとかなら、出来ます」といいました。
このやりとりがあったから、僕はいま、「ヘルパーステーション・アパラン」で「事務職員」として働くことができるようになりました。ホンとに首の皮一枚でセーフ、僕は仕事を失わずにすんだのです。

「5. 事務の仕事」
僕はパソコンが好きで、そんなに詳しくはなかったのですが、「ワードやエクセル」が少し使えたので、今、事務の仕事をしているのです。事務の仕事について、丸三年がたちます。僕の病気の状態が悪かった時とかは、仕事を休ませてもらったりもしましたが、ほんとに、僕が今もこうして仕事をしているなんて、まったくもって、奇跡です。精神障害を持つ人たちだって、自分に合った仕事ならできるのではないか。自分に出来ること、好きなこと、そんなのを仕事にするとするならば、ちゃんとできるのではないか。もちろん、状態の悪いときに「少し休ましてもらう」ということも必要なのですが。
僕は、どうやら、「事務職」がむいているようです。精神障害を持つ人でも、自分に合った仕事が見つかれば、ちゃんと仕事が続くのではないでしょうか。もちろん、「少しくらいの周りの人たちからの理解」は必要なのですが。

僕を含めて、「精神障害の人たちみんなが少しづつでも仕事を持てるようになる」日を夢見て、この文章を終わりにしたいと思います。

以上、長々と、僕の話を聞いてくださって、ありがとうございます。



 

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